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『おこった月』

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『おこった月』という絵本があります。
ウィリアム・スリーター再話、ブレア・レント絵、
はるみこうへい(晴海耕平)訳で、1975年冨山房刊、
2006年に改訳のうえ長崎の童話館から出ています。
http://www.douwakan.co.jp/group/books/131.html

北米「先住民族」のルーパンという少年が、
月に連れ去られてしまったラポウィンザという少女を追い、
月の近くの星に次々に矢を射て、矢の鎖(梯子)を作り、
天に昇ります。その際、茂みの枝を髪に挿して行きます。

途中でお腹が空くと、枝に実った果実を食べました。
天上に着いた少年を迎えた老婆は、口から焼き魚や
焼きトウモロコシ、果物を出して食べさせてくれ、さらに
松ぼっくり、魚の目、ばらの花、石のかけらをくれました。

月の家で泣いているラポウィンザを救出したルーパンは、
松ぼっくりに代わりに泣き続けさせます。追って来た月に
魚の目を投げると湖が、ばらの花を投げるとばらの茂みが、
石のかけらを投げると高い山が現れ、2人は逃げおおせた、

こんな話です。

民間伝承として見ると「矢の鎖」・「呪的逃走」のモチーフが
組み合わさった話です。ちなみに出典は(訳書には記載なし)

Swanton, John R. 1909.
Tlingit Myths and Texts.
(Smithsonian Institution, Bureau of American Ethnology, Bulletin
39). Washington: Government Printing Office, pp. 209-212.

米国の人類学者スワントン(1873-1958)が1904年、
アラスカ州ランゲル村に住むトリンギット族の首長の母親から、
英語で聞いて記録したのが元の話です。

が、原話を読むと絵本とは細部が違っています。原話では、
・少年・少女ではなく二人の少年の話になっており、
・老婆がくれたのはトウヒの球果、バラの枝、アメリカハリブキ
(devil's club)、そして砥石でした。

改めて面白いなと思ったのは、矢の梯子に昇る際、
茂みの枝を髪に挿してゆき、その実った果実を途中で食べた、
という部分です。

台湾原住民タイヤル族の神話にも、似た話があります。

大昔はまだ月がなく、半年はずっと昼、半年はずっと夜なので
人々は困り果て、若者たちを太陽征伐に送り出した。
その際、若者たちは赤子を負い、道々ミカンを植えて行った。
しかし彼らは老いて死に、成長した子供たちが太陽を射た。

射られて二分され、片方は太陽に、もう片方は月になった。
そして目的を遂げた青年たちは、実ったミカンを食べつつ、
村に帰って来た、というのです。

(小川尚義・浅井恵倫『原語による台湾高砂族伝説集』
 東京:刀江書院、1935年、41-44頁)

遠征に出る時に糧食を欠かさない、というのは、まさに
生活実感がにじみ出ていて、面白いなあと思います。
そしてこれも、環太平洋の神話・文化の共通例の一つです。
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複数の太陽
「太陽の射手1997」「
「世界の神話をどう読むか」
で大林太良氏が触れていました

京都大学修士論文のようですが
どうしたら 拝見させていただけるでしょうか 









        
 
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